寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~

◇◇◇

翌日の金曜日の朝、出勤して社長室に入ってすぐのことだった。
ノックもせずに中へ入って来た琢磨さんは、私のデスクに両手を突いて無邪気な笑顔を浮かべた。
昨夜のこともあったせいで、彼から遠ざかるように椅子に預けた体が強張る。


「……昨日はいろいろとありがとうございました」


アクシデントはあったとはいえ、高級イタリアンにバラのプレゼントをいただいたことは事実。


「すごく楽しかったよ、茜ちゃん。今度は夜景の綺麗なラウンジに連れていってあげるよ」


私が首を横に振って俯いていると社長室のドアが開き、戻ってきた理玖さんの顔が琢磨さんを見て曇る。


「ここは副社長室じゃないぞ」


憮然とした表情で言うと、琢磨さんは「そうだった? ちょっと間違えたみたいだな」とおどけた。

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