寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
「昨日は茜ちゃんの誕生日をふたりでお祝いしてさ」
理玖さんに見せつけるように言う。
琢磨さんが「ね?」と私に念押しするようにするものだから反応に困っていると、理玖さんは「水城さん、そろそろ出よう」と助け船を出してくれた。
「出るってどこへ?」
不思議そうにする琢磨さんに「社長は、お昼の情報番組に出演されるんです」と教えてあげると、彼がパッと顔を輝かせる。
「俺もついて行こうかな」
「……はい?」
「社長ばかりが呼ばれるんだよね。ずるいと思わない? こう見えて、俺だって立派なコンサルタントなんだけど」
琢磨さんは笑みを浮かべながらも大真面目に胸を張る。冗談なのか本気なのかわからない。
「琢磨、お前を連れて行く気はない。ここで油を売ってないで、さっさと自分の部屋へ帰れ」
理玖さんがばっさりと切り捨てると、不満そうにしながら「またね、茜ちゃん」と手をひらりと振り、琢磨さんは社長室を出て行った。