寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~

胸にちくっと走った痛みをなんとかごまかし、ふたりのやり取りを眺める。

ところが理玖さんは、「申し訳ありませんが、これから約束があるんです」と彼女の誘いを断ってしまった。

……約束? このあとにあったかな。

手帳を慌てて広げてスケジュールを確認したけれど、公のものはなにも入っていない。
ほかにあるとすれば私用か、もしくは私にまだ知らされていない急な用事が入ったか。


「そうなんですか……。では今度ぜひ。ご連絡お待ちしてます」


残念そうに彼女が立ち去るのを見届けてから、彼の元へと急ぐ。


「収録お疲れ様でした。あの、お約束というのは――」

「行くぞ」


私が聞く間もなく、理玖さんが歩き出す。
わからないまま寺内さんの運転する車に一緒に乗り込むと、なぜかマンションの地下駐車場へと連れて来られた。
まだ時刻は午後三時過ぎで帰るには早すぎる。

「なにかお忘れものですか?」と尋ねると、理玖さんは車を社用車から自分の車へ乗り換えた。

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