寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
「どこかへ行くんですか?」
そう尋ねる私に「内緒」と理玖さんはいたずらっぽく微笑むばかりで、しまいには高速道路を走り始めてしまった。
「あの、仕事は……?」
「今日は終わり。毎日真面目に働いているんだ。たまにはいいだろう」
どこか楽しげに理玖さんは言った。
それから高速を走ること二時間、彼が車を停めたのは山奥に静かに佇む温泉宿だった。
重厚感のある平屋建ての立派な日本家屋が夕映えにライトアップされて美しく、思わず息を飲んだ。
戸惑っている私の手を引き、理玖さんがずんずん進んでいく。
「もしかしてここに泊まるんですか?」
「もちろん。明日は土曜日だから問題ない」
どうして突然こんなに遠くまで来たんだろう。
どういうつもりなのか理玖さんの意図が全く掴めなくて、彼の横顔を見つめる。
私たちが案内されたのは、綺麗に手入れをされた庭を進んだヴィラタイプの離れだった。