寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~

「昨夜の理玖様はクライアントの方とお食事をされておりました。その方は大変な酒豪でございまして、あまりお酒の得意でない理玖様はつい飲みすぎて酔ってしまわれたようです」


確かにお酒の匂いをプンとさせていた。

でもだからと言って、自宅の区別がつかなくなるもの?

不審がる私に気づいたらしい男性が、「それと」と続ける。


「理玖様はひどい近視でございまして。ただ昨夜は酔って眠ってしまうことを考慮して、コンタクトレンズを外して眼鏡でいらしたものですから。その眼鏡はどこかで落としてしまったらしく、酔っている上に目までよく見えないということで、部屋を間違えてしまったのでしょう。私がお迎えにあがっていればこんなことにはならなかったのでしょうが」


ものすごい近眼の上、お酒に弱いせいで、帰る場所を間違えたと男性は説明してくれた。
私は視力がいいほうだし、見境がつかなくなるほどお酒を飲んだこともない。
そんな状況になったら、私もそんな大きな間違いをしてしまうのか。
そう考えると、お酒はほどほどにしようと密かに心に誓った。


「住んでいるところは近いんですか?」

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