寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
「二軒隣のタワーマンションでございます」
二軒隣と言ったら……え! あのセレブなマンション!?
驚きで言葉もなかった。
あのマンションと私のアパートを間違えるなんて、どれだけ視力が弱いのだろう。
「私は寺内と申します。失礼ですが、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
車まであとわずかというところで寺内と名乗った男性が振り返る。
「あ、はい……水城茜と申します」
「水城様でございますな。ささ、水城様、どうぞお乗りくださいませ」
寺内さんが後部座席のドアを開ける。
「ありがとうござい――」
そこまで言ってから言葉に詰まった。
毛足の長い白い絨毯が敷き詰められた車内は、私の知っている車の内装とてんで違う。
椅子が前向きじゃなく、左右に横向きだ。
その場で固まっていると、寺内さんが「理玖様がお待ちになっておりますので」と私を急かした。