寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~

「二軒隣のタワーマンションでございます」


二軒隣と言ったら……え! あのセレブなマンション!?

驚きで言葉もなかった。
あのマンションと私のアパートを間違えるなんて、どれだけ視力が弱いのだろう。


「私は寺内と申します。失礼ですが、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」


車まであとわずかというところで寺内と名乗った男性が振り返る。


「あ、はい……水城茜と申します」

「水城様でございますな。ささ、水城様、どうぞお乗りくださいませ」


寺内さんが後部座席のドアを開ける。


「ありがとうござい――」


そこまで言ってから言葉に詰まった。
毛足の長い白い絨毯が敷き詰められた車内は、私の知っている車の内装とてんで違う。
椅子が前向きじゃなく、左右に横向きだ。

その場で固まっていると、寺内さんが「理玖様がお待ちになっておりますので」と私を急かした。

< 21 / 318 >

この作品をシェア

pagetop