寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
「は、はい」
……や、柔らかい。
思い切って白い絨毯に足を踏み入れると、ふかふかの感触がぺったんこのパンプスに伝わる。腰を下ろしたシートは滑らかなレザー仕様だった。
後部座席と完全に仕切られた運転席の様子が見えず、ひとりぼっちになった気分だ。
しばらくすると、滑るように車が動き出す。
音も揺れもほとんどない。さすがは高級車。
慣れない車に背筋をピンと伸ばしたまま、およそ二十分。
車は目もくらむような大きなホテルのエントランスに横づけされた。
庶民の私でも、このホテルが高級だということは知っている。
お礼をここで……?
そこで自分の着ている洋服に気づいた。ざっくりとしたダークグリーンのセーターにチノパンという、高級な場にそぐわない格好だ。
こんなところで降ろされたら困る。
どうしようかと体を強張らせていると、私の不安と裏腹に寺内さんがにこやかな顔でドアを開いてしまった。
「水城様、どうぞ」
「降りたくないです」
首を一身に横に振る。