寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
◇◇◇
沙智さんのアパートは、理玖さんのマンションから電車で三十分のところにあった。
暖色系で統一された1DKの部屋は、沙智さんらしく綺麗に片づけられていた。
夕食とお風呂を済ませ、明かりを落とした部屋で沙智さんはベッドに、私はその隣に敷かれた布団にもぐり込む。
「それでなにがあったの? 私が茜の部屋に行ってもよかったのに」
「私、住むところがないんです」
「からかわないで」
沙智さんは笑ったあとに、「真面目に話を聞こうとしているんだからね?」と私に釘を刺す。
「からかっているわけじゃないんです。本当にそうなんです」
「履歴書に書いてあったのは?」
「あれは少し前まで住んでいたアパートで……」
「それじゃ、茜はどこから通っていたの?」
ベッドに起き上がり、沙智さんが私を不思議そうに見下ろす。