寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~

◇◇◇

沙智さんのアパートは、理玖さんのマンションから電車で三十分のところにあった。
暖色系で統一された1DKの部屋は、沙智さんらしく綺麗に片づけられていた。

夕食とお風呂を済ませ、明かりを落とした部屋で沙智さんはベッドに、私はその隣に敷かれた布団にもぐり込む。


「それでなにがあったの? 私が茜の部屋に行ってもよかったのに」

「私、住むところがないんです」

「からかわないで」


沙智さんは笑ったあとに、「真面目に話を聞こうとしているんだからね?」と私に釘を刺す。


「からかっているわけじゃないんです。本当にそうなんです」

「履歴書に書いてあったのは?」

「あれは少し前まで住んでいたアパートで……」

「それじゃ、茜はどこから通っていたの?」


ベッドに起き上がり、沙智さんが私を不思議そうに見下ろす。

< 210 / 318 >

この作品をシェア

pagetop