寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
エイミーさんの登場は、脳天に強烈な一発を浴びせられたような衝撃だった。
蘇ったキスシーンを振り払う。
女性にモテる理玖さんにしたら、私としたキスは挨拶と同じ。
私と体を重ねたのも深い意味はなく、ただ私に自信をつけさせるため。
それなのに私は、勝手に自分は特別だと勘違いしてしまった。
ずっと言い聞かせてきたのに、豪華な温泉宿で理玖さんがくれた『また一緒に来よう』というひと言を素直に信じてしまった。
社交辞令みたいなものだっただろうに。
「なんかごめんね、茜。私、恋愛に疎いから、いいアドバイスができなくて」
沙智さんが申し訳なさそうに眉尻を下げる。
「いいんです、聞いてもらえるだけで」
こうして誰かに話すだけで、頭と心が整理できるとわかったから。
それに、答えを出すのは自分しかいない。
「ありがとうございました、沙智さん」
「ううん。私こそ話してくれてありがとう」
ベッドへ戻った沙智さんとふたり、暗闇に目を閉じた。