寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
「理玖さ――」
言葉はキスに飲み込まれた。
私が目撃したエイミーさんとのキスと、今私がしているキスの違いを私は知っている。
理玖さんの舌がゆっくりと私の口内をかきまわしていく。彼の動きに合わせて、私も必死に舌を絡ませた。
車内に響く水音が、私の気持ちをいっそう燃え上がらせる。
あのシーンが霞んでしまうほどに、理玖さんのキスに囚われていく。
これほどまでに気持ちが満たされるキスがあることを私は初めて知った。
今すぐに体を触れ合いたくて、理玖さんの温もりをもっと感じたくて、ねだるように彼にすがりつく。
「……わかってる」
理玖さんは一瞬目を丸くしてから、嬉しそうに微笑んだ。
車から私を下ろし、ついさっき披露宴会場となっていたホテルへと私の手を引いていく。
指を絡ませてエントランスをくぐり、フロントで手続きをする。理玖さんは躊躇うことなくスイートルームを指定した。
地上十五階。
最上階にあるスイートは、ブラウン系で色味が統一されたシックな部屋だった。