寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~

触れるだけのキスかと思いきや、唇を割って舌が挿入される。
エイミーさんが見ているのにと思ったのは、ほんの数秒のことだった。すぐに理玖さんしか見えなくなり、そのキスに応える。
心が通じ合ったばかりの私は無敵だった。


「もういいから」


エイミーさんから呆れたような声が発せられる。
理玖さんは私を解放すると、親指で唇を拭ってくれた。


「これでわかってもらえたか」

「……十分にね」


エイミーさんは大きく息を吐き出し、やっていられないといった具合に肩をすくめた。


「好きな人がいるって本当だったのね……」

「そうだ。だからもう帰れ。これから来客があるんだ」


私の疑問を遮るかのように、理玖さんがエイミーさんを部屋から追い出しにかかった。
彼女の背中を押す。


「ほんと理玖ってば冷たいんだから」

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