寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
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「飛行機がダブルブッキングで乗れなかったの」
エイミーさんが理玖さんのマンションにやってきたのは、その日の夜のことだった。
最終便だったため、今日の飛行機に乗れなかったそうだ。
理玖さんは「はぁ」と重いため息を吐き、頭を抱えた。
仕方なしにエイミーさんを部屋へ招き入れると、彼女は立派な部屋にテンションが上がり、キャーキャー言いながらあちこちを見て回った。
思えば、エイミーさんが現れなかったら、私たちの関係はまだ曖昧なままだったかもしれない。
理玖さんの気持ちがわからずに、きっと私はモヤモヤし続けていただろう。
エイミーさんが私たちにきっかけを作ってくれたのだと思うと、とても邪険には扱えない。それは理玖さんも同じだろう。
「明日はきちんと飛行機に乗れよ」
「わかってる」
本当にわかっているのかどうなのかは別として、眼下に広がる夜景にうっとりしながら、エイミーさんが軽く頷いた。