寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~

◇◇◇

それから一週間ほどが経った朝のことだった。
出勤してロッカールームにバッグを置いて出ようとすると、「水城さん」と女子社員に呼び止められた。
振り返ると、私と同年代の女性が三人立っている。


「社長が結婚するって本当ですか?」


唐突にそんな質問をぶつけられ、頭がすぐに処理しきれない。

理玖さんが結婚?
確かに彼女は今、そう言ったけれど……。
――まさか、私たちのことが噂になっているの?
噂話だけがひとり歩きして、いきなり結婚ということにでもなってしまった?

彼はコソコソ付き合うつもりはなかったようだが、理玖さんが女子社員の羨望の的になっているからできるだけ内緒にしたいと私から申し出ていた。

ただ、どこかで油断していたのも事実。
琢磨さんやエイミーさんにも堂々と宣言してしまったから、どこからかその話を聞きつけた人がいてもおかしくはない。
目を瞬かせて彼女たちを見つめ、鼓動は嫌な音を立てて加速する。
問い詰められても、うまく誤魔化して逃げなければならない。

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