寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~

知っているも知らないもない。私が昨日、最終面接まで進んだ会社がそこだ。

オリオンコミュニケーションズは国内外に五つの拠点を置いていて、主に企業を相手に経営に関するコンサルタントをしており、日本ではその業界でトップに君臨している。
試験前にざっと調べたところでは、総従業員数は約八百人で東京本社だけでも五百人。
オリオンコミュニケーションズの指導に心酔している企業のトップも多いらしい。

半年ほど前に社長が亡くなり息子さんがあとを継いでいるはずだから、今私の目の前にいるのがその息子さんだ。

彼から並々ならぬ風格を感じたのは、そのためだったのだと改めて思い知った。
昨夜同様に高級そうなスーツは当然のこと、仕草も洗練されている。
違う人種の人とこうしていることが、信じられない思いでいっぱいだった。


「どうかした?」


風見さんが不思議そうに尋ねる。


「いえ……。会社の名前は聞いたことがあります」


どぎまぎしているのを必死で隠し平静を装う。


「そう」

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