寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~

「全然違います」


思わず目に力を込める。
それはピラミッドの頂点に近いところにいる人が言うセリフだ。下々の私たちは、それを見上げてため息を吐くばかり。

つい浮かれ気分で風見さんの提案に頷いてしまったけれど、そんな人との同居なんて私、本当に大丈夫……?

百八十度変わる生活に身を置くことに、不意に期待と不安が入り混じる。
どんどん小さくなる街並みを見ながらバッグの持ち手を握りしめた。


風見さんの部屋で私がなによりも驚いたのはバスルームだ。
壁一面の大きなマジックミラーから臨む景色の壮大なこと。足をめいっぱい伸ばしてもまだ足りないくらいの大きな浴槽。しかもジェットバスもテレビも付いているなんて、ホテル並みの設備に気圧される。

私に与えてもらった部屋はリビングの左手にあり、なんと十畳と広い。住んでいたアパートの部屋とキッチンを合わせてもまだ足りないくらいだ。
おまけにベッドはセミダブルだし、シングル以外に寝たことのない私には贅沢すぎて言葉も出ない。

スケールが違い過ぎて、とにかくどこを見てもため息しか出てこなかった。

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