寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
「大丈夫?」
風見さんに声をかけられ、顔の前に手をひらひらとされて初めて、呆けたように突っ立っていることに気づいた。
「あ、はい、大丈夫……だと思います」
背筋をピンと伸ばして答える。
「“だと思います”って」
クスッと笑った風見さんの笑顔が爽やかで、ドキッとさせられた。窓を開けているわけでもないのに、心地いい風に吹かれたような感じだ。
「こんなに素敵な部屋に住めるなんて夢みたいです」
「気に入ってくれたのならよかった」
気に入るもなにもない。地に足がついていないようなふわふわした感覚だ。
「それじゃ俺は社へ行かなきゃならないから」
「はい。お忙しいところ、いろいろとありがとうございました。今日からどうぞよろしくお願いします」
深々と頭を下げると、風見さんは「こちらこそよろしく」と私の頭をくしゃっと撫でた。
それにどぎまぎしつつ「いってらっしゃい」と言うと、なんだか新婚家庭のような妙な気分になった。
――いけないいけない。
私ときたら、なにを考えているのか。
頭を振って危険な妄想を追い払った。