寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~

◇◇◇

その夜、風見さんが帰宅したのは九時をとうに過ぎた時刻だった。
事前に食費として渡されていたお金でスーパーに買い物へ行き、夕食の準備は一応万端。
リビングへ入ってきた風見さんは、少し疲れた様子でネクタイを緩めた。


「えっと……おかりなさい」


なんと言って出迎えたらいいのか迷ったものの、その言葉しか見つけられない。
風見さんは「ただいま」と言いながら部屋を見渡して足を止めた。


「あ、勝手に片づけてしまったんですが……」


昨夜は目に入ったリビングだけだったが、今日の午後はダイニングとキッチンも片づけさせてもらったのだ。
一緒に住まわせてもらうとはいえ他人の家。
許可も得ずにどうかとは思ったけれど、いつもの癖で放置することはできなかった。


「本当に整理整頓が得意なんだな」


風見さんは感心したように唸った。
もともと素敵な部屋だったけれど、居心地はかなりよくなった気がする。

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