寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~

なにがなんだかわからないままお弁当を食べ終え、お茶のカップを洗い終えて社長室へ戻ったときだった。


「出かけるぞ」


風見さんがスーツのジャケットを肩に引っかけ、通りすがりに私に告げる。

「あ、はい、いってらっしゃいませ」と両手を前で揃えて頭を下げると、風見さんは足を止めて私に思わぬひと言を浴びせた。


「なにを言ってるんだ。茜も一緒だ」

「――はい!?」


飛び上がって驚いてしまったのは、風見さんの秘書の仕事を今ひとつ掴めていないせいだ。
瞬きを何度も繰り返す私の前に風見さんが立つ。


「今着ているスーツじゃ、いかにも就活生だろう」

「……そう……ですね」


なんの特徴もないタイトスカートで黒一色のツーピース。これで何社となく試験を受けてきた。まさしくリクルートスーツだ。

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