カフェの人々


 女性はコーヒーを飲んだ。

 とても静かに。

 風味を堪能するように数秒間女性は目を閉じた。

 そしてゆっくりとその目を見開く。

「みんなで男を囲んでね、ホームから突き落としたの」

 女性が駅名を口にしたとき、五年前に事情聴取した六人の目撃者たちの顔をはっきりと思い出した。

 この女性を知っている。

 あの人身事故の目撃者の一人だ。

「女の夫はどうなったんです」

「死んだわ去年、老衰よ。最後まで女に裏切られたとは知らずに。全ての財産を失ってもそばにいてくれる妻をもって自分は幸せだと信じてね。ある意味ほんとうに幸せよね。真実を知ることがいつもいい事だとは限らないから」

「そんなの許されるはずがない」

「許す?誰が?法が?男のしてきたことは法で裁かれることではなかったかも知れない。でも法で裁かれない罪が法で裁かれる罪より軽いわけじゃないでしょ」



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