カフェの人々
 

 写真でしか知らない死んだ男の顔を思い出す。

 女性はなにげに左にはめた腕時計をのぞき込んだ。

 店内を見回すといつの間にか客は僕たちだけになっていた。

「そろそろ連れがくる時間だわ」

 女性は目の前を片づけ始める。

 トレイを持って席を立つ女性に問いかける。

「五人目の協力者は?」

 女性は窓の外に顔を向け笑みを浮かべると手をひらひらとふった。

「男をひいた電車の運転士よ」

 じゃあね、と女性は店の入り口へと歩いて行こうとして立ち止まった。

 僕を振りかえる。

「私たちを捕まえられないわよ。だって証拠がないもの。それに」

 にっと口の両端を上げる。

「面白い作り話だったでしょ。ね、警官さん」

 涼しい目をして彼女は言った。

 最初から僕に気づいていたのだ。

 自動ドアが開き雨の匂いが吹き込んでくる。


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