ネイビーブルー
「へ?」
ゆっくり振り返ると、あの時のように彼がこっちを見ていた。
「お前、好き嫌い多くない?」
「バナナと高菜だけだし…」
え、覚えてんの?私のこと…
どこを見たらいいのか。
恥ずかしくて、目が泳ぐ。
「昆布は?」
「食べれる…」
「んじゃ、これ。」
と、自分が持っていた昆布のおにぎりを私に差し出してきた。
「え、いいよ!悪いよ!」
「いいって。俺、高菜も好きだし。」
「いや、でも悪いよ」
「いいから。ほら」
そういうと、私の頭の上におにぎりを置いて。
彼は高菜おにぎりに手を伸ばした。
すぐ横に伸びた腕に、どきどきしてしまう。
「ありがとう…」
「おー、じゃあな。」
黒髪のあいつは、振り向きもせずに友達のほうへ行ってしまった。