忘れられない過ち
急にアイスなんてどうしたんだろう。
「元気出せってことじゃない?」
私の後ろの席にいた友達がそう言ってきた。
そういうことかと腑に落ちた。
それと同時に少し笑ってしまった。
陽向がくれたのがアイスだったからだ。
真冬だったし、授業が始まるまで暖房はつけてもらえないので、朝の教室は異常なほど寒かった。
陽向は朝練後だから、感覚が麻痺して、寒さに気が付いていなかったのだろう。
不器用な優しさだと思った。
真冬に、ホットドリンクなどではなく、アイスを渡してくる陽向はどこか抜けている人だと感じた。
でも、それが逆に嬉しかった。
不器用なのに、必死に励まそうとしてくれていることに心が温かくなった。
真冬にアイスを食べて、温かい思えたのはこの時が初めてだった。