愛情の鎖 「番外編」〜すれ違いは蜜の味〜。

「私、フルーツケーキ大、大、大好きなんです!」

「そりゃ良かったな。思う存分食え。つってもあれか…、もうお腹一杯ならあんまり無理すんなよ。お腹壊してもあれだし」

「いえ……実はお腹はすいてます」


だってさっきは結局料理を食べ損ねてしまった。モンブランも寸前のところでお腹の中に入れることはできなかった。

彩香さんに呼び止められ、話の方に夢中になってしまい、ほとんどお酒しか飲んでなかった状態だもん。


「そんなにあいつ(彩香)とじっくり話してたのか」


私の返事を聞いてコウさんが意外そうな、だけど心なしか心配する素振りを見せる。


「大丈夫ですよ。本当に苛められてませんから。むしろコウさんがいかに優秀で凄い人なのかを聞かされただけなので」

「は?」


これにはコウさんも面食らったようだった。

どういう会話だよ…、なんてつっ込みながら表情を険しくさせつつも、よっぽど意外な言葉だったのか次第に複雑そうなものに変わる。


「彩香さん、間違いなくコウさんのこと好きですよ。えっと、人間として…」

「やめてくれ……」


うんざりしたように私からそっぽを向いた。

そんな様子が可笑しくてクスクスと笑う。

きっと以前の私だったら嫉妬して焼きもちを妬いてたと思うけど、今は不思議とそんな感情はおこらない。

たぶんそれは彩香さんがどういう人物なのかを知ることができたから。

彼女と話したことにより、彩香さんへの不信感が私の中から消えたからなのかもしれない。
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