愛情の鎖 「番外編」〜すれ違いは蜜の味〜。

「とりあえず食うぞ」

「あ、はい」


あいつの話はもういい。と言わんばかりに注いだばかりのワイングラスを手渡されて、私は思わず正座して背筋を伸ばした。

コウさんが私の隣に座り、同じようにグラスをてに持って、お互いの視線が合わさった瞬間、「カンパイ」とグラスを重ね合わせた。

カチンと透き通った音が響き、何だか心までウキウキしてきちゃう。


「コウさん、この度は昇進おめでとうございます」

「何だよ改まって…」

「そう言えば私の口からまだちゃんと言ってなかったなぁ、て」

「別に大したことじゃない」

「ダメです!大事なことです。彼女としてちゃんと言わせてください」


だってこんな機会は滅多にないでしょ。大好きな人への嬉しい出来事はやっぱり自分のことのように嬉しいもん。


「お仕事大変だと思うけど、これからも頑張ってくださいね」


そう言うと、何故かコウさんはふっ…と柔らかな笑みを浮かべた。

その不意打ちの表情にドキッとしながらも彼があまりにも穏やかに「サンキュー」とクシャクシャと私の頭を撫でるから、懲りずにまたキュンと胸が疼いてしまう。
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