愛情の鎖 「番外編」〜すれ違いは蜜の味〜。
「別に迷惑だなんて一言も言ってない」
「だって…」
言葉に詰まったじゃない。
すぐに返事だってしてくれなかったもん。
私だけ一人でドキマギしてばかみたい。悲しくもなってくるよ。
なのに、そんな私を見て彼は口元の口角を可笑しそうに上げる。
「お前可愛いな」
なんて手を伸ばし、茶化したように頭を撫でてくるからますます混乱した顔付きになってしまう。
可愛いだなんて普段言われたら絶対嬉しいはずだけど、今の心境の私には複雑なものにしか聞こえない。
「そんなに俺と一緒にいたい?」
「えっ?」
「さっきからそういう顔してる。俺と離れがたいって目が訴えかけてるぞ」
これにはドキリとして顔が熱くなる。
私ってそんなに表情に出ていたの?
まるで心を全部見透かされてるようなコウさんの眼差しに返す言葉が見つからない。
仕舞いには私の髪を一掴みし、くるくる巻き付けて遊びだす余裕の仕草までも見せてくるもんだから、さすがの私も不満げな目付きを送ってしまう。
「そんなにこの家が好きか?俺と離れるのが寂しい?」
「…っ……!」
顔を覗き込まれて顔を真っ赤にする。
直球すぎる言葉にただただ俯くことしかすることができないのに、彼はそんな私を見てさらに追い込む発言を落としてくる。