ずっとキミが好きでした。
「翼ちゃん」




「何?」




なっつんは、ジャジャーンと効果音をつけておれに雑誌を見せて来た。


掲載されていたのは、この高校の最寄り駅から二駅先に行ったところに新しく出来たうさぎと戯れることの出来るカフェだった。


     


「この前、翼ちゃんが私のワガママ聞いてくれたから、そのお礼にと思って…。どう?行ってみない?」




「ああ、良いよ。楽しみにしてる」




「じゃあ、いつにしよっかな~」





なっつんは、幸せを呼ぶという四つ葉のクローバーと平和の象徴である鳩が描かれた可愛らしい手帳を取り出し、予定を確認していた。


手帳も持っていないおれは、やっぱり女子力が低いと痛感せざるを得なかった。


脳内手帳を開いたが、もともと帰宅部。


特にやることも無い。


改めて見ると、空白だらけの毎日だった。





「この日はどう?」 




「ああ、OK」




「やった!翼ちゃんと初めてお出掛け出来る!」





ふふふ~んと鼻歌を歌うなっつんを愛おしく眺めながら、同時にこんなことも思った。




女子って面倒くさいな~。



いちいち相手の予定を確認し、一人ではなく、誰かを誘っていく。


うさぎなんて、ウチの近所では普通に放し飼いされていて、幼い頃から遊ばせてもらっていた。


うさぎを触れるカフェは普通の女子校生にはもの珍しいのかもしれないが、おれにとっては、時代がようやくおれに追いついたかという感じだ。



まあ、そんな女子の生活を楽しまなきゃ女子になんてなれないけれど。







おれは、まだ歌い続けているなっつんを尻目に針に糸を通した。

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