ずっとキミが好きでした。
オシャレなカフェというのは、神経をすり減らすものだ。
なっつんとの約束通り、おれは生まれて初めてカフェに行った。
しかもウサギが何羽もうろちょろしている初心者にはちょっと抵抗のあるカフェ…。
無事に行けたのは良かったが、完全に場違いだった。
スカートは制服以外で着ないため、汚れの少ないGパンに、“BREAK OUT!”と衝撃的な文字の入った白いTシャツ、さらにその上に赤を基調としたチェックのシャツを羽織って行った。
朝起きてから何時間も悩んでようやく決めた服装で参戦したが、明らかにカフェの雰囲気とマッチしていなかった。
生クリームがたっぷりと乗った、いかにも高カロリーで甘そうな飲み物を飲んでいたお姉さんにギロリと睨まれ、おれは入店と同時に帰りたくなった。
穴があったら入りたいとは、正にこのことだと思った。
そして一番最悪だったのは、ウサギのトイレになってしまったことだった。
「うわっ!」
男らしい悲鳴を挙げた時には、既にGパンに丸いコロコロとした汚物が乗っていた。
それだけならまだマシだったが、追い討ちをかけるように、耳の短い白いウサギがピョンと飛び乗り、一瞬で用をたした。
一方で、なっつんはそんなおれとは対照的に、花柄のワンピースに白いカーディガンという清楚な服を着こなし、きちんとカフェに溶け込んでいた。
なっつんは、おれの服装を特に気にする様子も無く、慣れた様子で淡々と席につき、メニューを見て注文をしていた。
飲食の注文、カフェでの会話の内容、食べ方など全てをなっつんに任せ、ときに模倣した。
「ふ~ん、美味しい!このキャラメルがさいっこー!」
可愛いピンク色のエプロン姿のお姉さんが持ってきてくれた飲み物を、おれはまるで毒キノコの選別をするような眼差しで見つめ、匂いを嗅いでから、カップを口に運んだ。
口に入れた瞬間、甘ったるい香りが鼻から抜け、砂糖やら生クリームやらの、あのべたついた感じが口に残った。
ばあちゃんといる時は、たとえ甘い洋菓子がおやつに出たとしてもお茶と一緒に食べるから、こんなに甘さが口の中で渋滞するのに違和感を感じた。
しかし、甘さに追い討ちをかけるように、目の前にはなっつんのオススメだという、こちらも生クリームがもりもり、チョコレートソースたっぷりのパフェがそびえ立っていた。
横から見ると、底にはチョコレートのソースが沈殿し、クッキーを砕いたような怪しいものが何層にも重なっているのが分かった。
意を決し、 パフェ専用のスプーンで 下層部を掘り起こし、上層部をすくった。
口に入れると、予想以上のチョコレート感に昇天しそうだった。
決してチョコレートがキライな訳じゃない。
甘さだけのハーモニーが口の中でケンカして美味しく感じられないんだ。
おれはやっぱり分からない。
女子でありながら、味覚は女子じゃない。
なっつんの喜ぶ顔をじっと見つめながら、五感をシャットダウンし、何も感じないように急いでパフェを食べきった。
口に残ったのは、甘さ。
脳内に残ったのは、言葉に出来ない苦さだった。
なっつんの膝の上で大人しくしているウサギが、まん丸の目でおれを睨んでいるように思えた。
なっつんとの約束通り、おれは生まれて初めてカフェに行った。
しかもウサギが何羽もうろちょろしている初心者にはちょっと抵抗のあるカフェ…。
無事に行けたのは良かったが、完全に場違いだった。
スカートは制服以外で着ないため、汚れの少ないGパンに、“BREAK OUT!”と衝撃的な文字の入った白いTシャツ、さらにその上に赤を基調としたチェックのシャツを羽織って行った。
朝起きてから何時間も悩んでようやく決めた服装で参戦したが、明らかにカフェの雰囲気とマッチしていなかった。
生クリームがたっぷりと乗った、いかにも高カロリーで甘そうな飲み物を飲んでいたお姉さんにギロリと睨まれ、おれは入店と同時に帰りたくなった。
穴があったら入りたいとは、正にこのことだと思った。
そして一番最悪だったのは、ウサギのトイレになってしまったことだった。
「うわっ!」
男らしい悲鳴を挙げた時には、既にGパンに丸いコロコロとした汚物が乗っていた。
それだけならまだマシだったが、追い討ちをかけるように、耳の短い白いウサギがピョンと飛び乗り、一瞬で用をたした。
一方で、なっつんはそんなおれとは対照的に、花柄のワンピースに白いカーディガンという清楚な服を着こなし、きちんとカフェに溶け込んでいた。
なっつんは、おれの服装を特に気にする様子も無く、慣れた様子で淡々と席につき、メニューを見て注文をしていた。
飲食の注文、カフェでの会話の内容、食べ方など全てをなっつんに任せ、ときに模倣した。
「ふ~ん、美味しい!このキャラメルがさいっこー!」
可愛いピンク色のエプロン姿のお姉さんが持ってきてくれた飲み物を、おれはまるで毒キノコの選別をするような眼差しで見つめ、匂いを嗅いでから、カップを口に運んだ。
口に入れた瞬間、甘ったるい香りが鼻から抜け、砂糖やら生クリームやらの、あのべたついた感じが口に残った。
ばあちゃんといる時は、たとえ甘い洋菓子がおやつに出たとしてもお茶と一緒に食べるから、こんなに甘さが口の中で渋滞するのに違和感を感じた。
しかし、甘さに追い討ちをかけるように、目の前にはなっつんのオススメだという、こちらも生クリームがもりもり、チョコレートソースたっぷりのパフェがそびえ立っていた。
横から見ると、底にはチョコレートのソースが沈殿し、クッキーを砕いたような怪しいものが何層にも重なっているのが分かった。
意を決し、 パフェ専用のスプーンで 下層部を掘り起こし、上層部をすくった。
口に入れると、予想以上のチョコレート感に昇天しそうだった。
決してチョコレートがキライな訳じゃない。
甘さだけのハーモニーが口の中でケンカして美味しく感じられないんだ。
おれはやっぱり分からない。
女子でありながら、味覚は女子じゃない。
なっつんの喜ぶ顔をじっと見つめながら、五感をシャットダウンし、何も感じないように急いでパフェを食べきった。
口に残ったのは、甘さ。
脳内に残ったのは、言葉に出来ない苦さだった。
なっつんの膝の上で大人しくしているウサギが、まん丸の目でおれを睨んでいるように思えた。