ずっとキミが好きでした。
「ねえ、知ってる?橘ツインのバンド、新曲作ったんだって」





「うん、噂で聞いた!確か、女性ボーカル募集してるんだよね」







「あたし応募しよっかな~。だって、もし上手くいったら橘ツインと一緒にバンドできるんでしょ!!」







「やんなきゃ損だよね」







ヒエラルキーの最上部にいる女子たちの会話を聞いてはじめて知った。


幼なじみなのに橘ツインはおれに黙っていた。










ーー嫌な予感がした。










あっすーはおれに興味ないから放っておくだろう。


  




でも、みっくんは…。







みっくんは…ーーーわざとだ。








おれを傷つけないために言わなかったんだ。


きっとそうだ。


あの日以降内々で作曲は進んでいたんだ。











おれは…ーーーなんなのだろう?






二人にとっておれは…なんだ?







やっぱり出会わなきゃ良かった幼なじみ…か。








可愛い幼なじみと恋愛みたいな、マンガチックなシチュエーションを望んでいたのか?







「土門ちゃん!!」





「へ?」






先輩たちの声が微かに聞こえ、私は意識を現実に戻した。






ーーまたやらかした…。





鼻が異様な臭いを感知した。


家庭科室に焦げ臭い匂いが充満していた。






「焼き色見ながらやって、って言ったよね?」






「すみません…」







部長の田所先輩に深々と頭を下げた。


田所先輩に手伝ってもらい、真っ黒焦げになった苦そうなクッキーを、ビニール袋に包んでゴミ箱に捨てた。



惨めだった。
 


充満した異様な匂いとムラムラとした言葉にできない感情が胸いっぱいに入り込んで、おれは気分が悪くなった。




どうして何度やっても上手くいかないのだろう。


やっぱり女に産まれてきたこと自体が間違いなのか。






長いため息をひとつつき、ふと窓ガラス越しに沈む夕日を眺めた。


茜色の空に、すーっと真っ直ぐな飛行機雲が流れていた。
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