ずっとキミが好きでした。
「ばさお、なにしてんの?」






恐ろしい声が聞こえ、おれは瞬時に買い物カゴを後ろに隠した。


実に最悪なタイミングでやってきた、憎き幼なじみに鋭い視線を投げかけた。


それなのに、彼はニヤリと不適な笑みを浮かべ、おれが隠した買い物カゴの中身をジロジロと見ていた。






「なんだよ!」






「ばさおみたいなヤツでも雑誌に興味あるんだ~。へえ~、意外だわ~」








ーー見られたのか。







おれは買い物カゴから雑誌を取り出し、元の場所に戻した。




あっすーが何か言いたそうにおれを見つめる。





おれは背を向けた。
 

これ以上話すことなどない。 


幼なじみ、何でも話せる仲であるはずなのに、気兼ねしてか何なのか知らないけれど、おれに黙って作曲していた。





昔だったら、おれに聞かせてくれたはずだ。


おれに歌わせてくれたはずだ。




おれがかなりの音痴だって知っていたとしても…。








おれは何のために、誰のために努力しているのだろう。














きっと…













きっと…













嫌われないためだ。













あっすーとみっくんに…。













嫌われたくないんだ。





必要としてほしいんだ。







「翼」





あっすーが別ルートを通って来てドアの前に立ちふさがった。


    



「どけろ。おれ帰るから」






自動ドアの上のセンサーが反応し、開閉を繰り返す。


おれはドアが開くのを見計らって、ドアとあっすーの隙間を通った。




田んぼ道を走り回っていたから、足はそれなりに速い。


あっすーから一秒でも早く離れたくて全速力で駆けた。



肌をすり抜ける風がいつもより冷たく感じる。


振り返ったが、予想通り追いかけては来ていなかった。







それだけの存在なんだ。





あっすーにとっておれは…ただの知り合いだ。


改めて突きつけられるとこんなにも痛いなんて…。



  


おれの気持ちには名前がつけられそうだった。
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