五感のキオク~記憶の中のアナタの声~
頭の中はフル回転だけど、ピクリとも動かない私に彼は眉間にしわを寄せ……


「昔の男に会っても、嬉しくないよな」


いや、そうじゃない。

そうじゃなくて、


記憶が一気に押し寄せてきて

その声に鼓膜がいつもより震えて、

頭の中で響いて、響き渡って……


「……ちがうっ」


そういうのがやっとだった。

私が口を開いたことで、眉間のしわはなくなり、少しだけホッとした顔を見せた彼。

あの頃あった軽薄な印象はない。

それどころか。大人の男の色気みたいなものが感じられる。

私が25だから、彼は今30。

そうか、本当に今は大人の男なんだ。


「それで?乾杯する?」


彼はたっぷり待った後、もう一度私に聞いた。


「……する」


いつの間に私もグラスを持ちそう答えていた。
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