君に捧げるワルツ ー御曹司の恋と甘い旋律ー
「そういう顔をされると、止めにくいじゃないか……。

レッスン後のその男の行動なんて読めてるんだよ。お礼にと言って食事か飲みに連れ出して、遅くなったから心配だとか言って、家に送ろうとして……」


「すごい、どうしてわかるんですか?」


確かに杉崎さんはレッスン後にお鮨やお酒をご馳走になっている。レッスン料も頂いているから、恐縮するばかりなのだけど。


「ん、前科があるのか」


私の両手をベッドに押さえつけて「それは浮気の白状だな」と続けた。


「違いますって……。その時私は澪音の……恋人代行だったし」

体を重ねた後でも、裸の胸が澪音の視線に晒されると恥ずかしくて顔が熱くなる。両手の自由がきかないので、顔を横に向けて視線から中途半端に逃れる。


「わざわざ口説かれる隙を作るなよ。そういう魂胆だとわかるだろ」


「いえ、そんなことは無かったですよ。

あの人は外交官で、もうすぐウィーンに赴任するから仕事で必要になるダンスを学びたいって……

澪音、あのっ、話のとちゅ、……ぁっ」


澪音の唇が胸元を滑り、下着で隠れるような場所に痕を残した。


「行くな、嫌なんだ……

柚葉が他の男と踊るのなんて、耐えられない」

私の両手を開放すると、澪音は胸の膨らみをゆっくりと撫でた。残したばかりの痣を指先でなぞり、もうひとつ痕を増やす。


私の体はそれだけでまた容易く溶けて、意識がぼやける。

「れお、……んっ……」
< 132 / 220 >

この作品をシェア

pagetop