君に捧げるワルツ ー御曹司の恋と甘い旋律ー
「あっ、それ……!」


「卑怯なマネしてごめんなさい。たとえあなたに恨まれてたとしても、俺はあなたを放っておけないんです。」


澪音の曲を人質に取られると私にはどうしようもなく、タクシーで杉崎さんに連れられて神楽坂の料亭に来ていた。ひっそりとした佇まいが上品で、自分のお金ではとても入れなさそうな高級なお店たった。


「もしかして気がついていないといけないから始めに言っておくと、俺は柚葉さんに気があるんです」


「ごほっ……いきなり何を……」


杉崎さんが衝撃的なことを口にするから、ビールを喉に引っ掻けてしまう。


「やっぱり気がついて無かったか……。俺の好意なんて話の前段で、本題は別なんですけど。とりあえず知っといて貰わないと話が進まないから。



柚葉さん、ちゃんと避妊してますか?」



その言葉の意味を理解するまで、私は長い間フリーズした。


今、避妊って言った!?


「ぎゃーーー!

何ですか急に!セクハラ過ぎるんですけど!!

それがどうしても伝えたいことですかっ!?」


人にそんなこと聞かれるのは初めてなので、慌てふためいてビールのグラスを倒してしまう。


「わぁ、すみませんっ。私ったら……」


「今のも俺が悪いですね。すみません、あの男は止めといた方がいいですよという意味です。」


「それならそうと言ってくださいっ。

澪音のどこが駄目なんですか」


ものすごく動揺してした私は、杉崎さんが澪音の名前をこれまで一度も言っていないことや、そもそも杉崎さんが私と澪音の関係をどうして知っているのかということには全く気が回らなかった。
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