君に捧げるワルツ ー御曹司の恋と甘い旋律ー
「笑顔は相手の懐に飛び込むための飛び道具、かよわさは演技次第……

って、これ全然マナーの講義じゃないですよね!?」


「そうよ。戦い方を教えるって言ったじゃない。あなたが蹴散らすべき女はたくさんいるのよ。

今の澪音にはね、信じられない数の縁談が寄せられているの。いわゆる良家の子女って娘たちとね」


「そうなんですか!?」


「澪音の最近の活躍ぶりは財界でも話題だもの。澪音に嫁がせたい親なんていくらでもいるでしょう。

それにピアニストとしての功績も有名で、あの容姿だし、何より澪音は優しいから。

澪音が愛想笑いを浮かべただけで、縁談相手は運命の恋だと思ってしまうわけ」


「それは……きっとそうですよね。澪音を好きになる女の子なんてたくさんいるハズ……」


泣きたくないと思っても声が震えてしまう。泣くのを堪えているのがかぐやさんに伝わったのか、とても優しい声で「馬鹿ね」と言われた。


「澪音のお父様が次から次へと縁談を受けてくるのよ。あれも嫌がらせの一種かしら。

澪音も忙しいんだから書面で断れば良いのに、一人一人に会って懇切丁寧に縁談を断っているの。


……全部、あなたのためにね」


「私……?」


「縁談を断られた娘があなたに悪意を向けるのが怖いそうよ。パーティーで起きたことを繰り返されたくないのよ。


だから彼女達の気持ちとか、立場とか、プライドとかを傷つけないようにやたらと気遣ってる。


優しい態度が逆効果になることもあるって言ってるんだけど、そういう女心はイマイチ理解しない奴なのよね」
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