君に捧げるワルツ ー御曹司の恋と甘い旋律ー
日付が変わると夢のようなデートはあっという間に終わり、澪音は私の自宅まで送ってくれた。午後からは澪音に仕事の予定が入っているので、今日はここでお別れ。


「楽しかったです。私、このデートのことずっと忘れないと思います。」


「嬉しいけど、そんな大袈裟に言うなよ。また時間を見つけて出掛ければいいんだ。

今回は俺の趣味に付き合わせたから、次は柚葉の行きたい場所に行こう」


仕事に向かう澪音の背中はすぐに遠くなったけど、見送った手には、綺麗な指輪が輝いている。


私が澪音の家に戻るのは、もう少しだけ先。


休日のうちに、私は杉崎さんに電話をしてウィーン行きを断った。



「……もし逃げたくなる時が来たら、いつでも助けに行くから。

緊急シェルター代わりに、俺のこと覚えておいても損はありませんよ」


「……心配して頂いてありがとうございました。それから、ごめんなさい」


「あなたと一緒に過ごして楽しかったから、気にしないで良いですよ。

ひとつ教えておくと、仕事でダンスが必要っていうのは嘘ですから。趣味以外で、今時社交ダンスが必要な社会なんてそうそうあるもんじゃないんですよ。

国内なら、柚葉さんが今から跨ぐ樫月の敷居の中くらいじゃないかな? 」


「え!? そうだったんですか?」


「あの家に嫁ぐなら、嘘や策略にはいつでも警戒しておいて。俺みたいな嘘つきに騙されたりしないように、これまで以上に気を付けて下さいね」
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