君に捧げるワルツ ー御曹司の恋と甘い旋律ー
支度を終えると、澪音が迎えに来てくれた。晴れの日に相応しいタキシードと、優美に整えられたヘアスタイルは澪音の整った顔立ちによく似合っていた。


「柚葉、綺麗だな……。何て言ったら良いんだろう。凛として、誰とも違う。柚葉の魅力が際立っているな」


「……あのっ 威圧感とか迫力とかはありますか!?」


「ん?……それは無いけど」


「駄目かぁ……」


「いや、待て。どんな方向を目指してドレスアップしてるんだ?」


「こうなれば目力をなんとかアップして……。マナーは鎧、教養は武器。嫌味を言うのは二流の証拠……」


「おいおい、呟いてる言葉が物騒だぞ。これからパーティーだっていうのに」


澪音が不思議そうに首を傾げるけど、私はそれどころではない。


「はい、パーティーは女の戦場であります。私は戦うのであります」


「言葉使いまで変になって……。柚葉、かぐやに何を吹き込まれたんだ」


「内緒です」



かぐやさんの講義を受けた真価を見せるのは今。

澪音にエスコートされて会場に入ると、張り付くようなビリビリとした嫉妬の視線を感じるけど、もう怯えてる場合じゃない。


早速、澪音の死角からロングドレスの裾が何かに引っ掛かっている気配がする。……でも、慌てない。


「あら」


私は普段の自分では決して言わないおっとりとした言葉使いで歩みを止めた。

「待って」と言うように澪音を上目使いで見上げて、ゆっくりと後ろを振り返る。ドレスの裾を踏んだ誰かが、さっと避けるのが視界の端で見えた。


「何でも無いわ、行きましょう」
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