君に捧げるワルツ ー御曹司の恋と甘い旋律ー
「弥太郎さん……。澪音はこんなに早く当主を交代して、大丈夫なんですか?」


『仕事の上では問題ない。クーデターにもならないほど、澪音はあっさりと実権を握っていた。

優しい性格とばかり思っていたが、案外底が知れない奴だ。27年も牙を隠して生きてきやがって』


細かい話は、携帯画面に文字を打って話してくれる。これもいつも通り。弥太郎さんは話しながらどこか誇らしげで、弟自慢なのかと思うと可愛い。


『ただ、親子としての仲を取り戻すのは時間が必要だろう』


「そうですか……」


『問題ない、それくらい俺が何とかしてやる。お前が気にしたところで役には立たないから、考えるのはよせ』


「はいはい!分かってますよ」


話をしているうちに、緩やかなワルツの曲がかかる。澪音はまだ遠くで、当面はパーティーの主役としての務めがありそうだ。


「弥太郎さん、一緒に踊りませんか?」


私なりに弥太郎さんへの感謝をこめて、誘ってみたものの…………、


「うへぇ」とでも聞こえてくるような嫌そうな顔で「ことわる」と言われた。


「そんなに嫌がらなくても良いじゃないですか!基本的に女性のダンスの誘いは断らないのがルールでしょう?」


「じょせいのさそいならな」


弥太郎さんは、暗に私が女じゃないと言ってるんだ。いつもいつも、嫌みなところが全くぶれない人だ。
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