君に捧げるワルツ ー御曹司の恋と甘い旋律ー
この、目の前の威厳に溢れたおじさまが今の当主で、澪音のお父さんなんだ……


「澪音、そんなに慌ててどうした?」

その人はにこやかに笑い、私を見ると


「あなたが噂の舞姫か」


と言った。


「舞姫なんてそんな素敵なものでは……」


私は綺麗過ぎる例えについ照れ笑いしてしまう。でも澪音は少しも表情を緩めずに、


「お戯れは止めてください」


と返した。


「お話したいのは他でもありません、私の婚約者のことです。勝手に決められては困ります。

私はこの柚葉と生涯を共にすると誓いました」


またもや、いきなりすぎるんだけど!?

澪音が直球な言葉で婚約破棄を訴えると、お父様は不思議そうに私をちらっと見るなり言った。


「澪音。お前はいつまで子供のつもりでいる。

女遊びはけっこうだが、次期当主の結婚相手は当主である私が決定する決まりだ。わかるだろう?」


「ですから、お父様にこの柚葉に決定して頂きたいのです。

私は柚葉を愛しています。柚葉以外の女と結婚するなど考えられない」


愛していると言われると、嘘だと知っていてもどきどきしてしまう。けれど、お父様は諭すように首を振るだけだ。


「お前の愛情は理由にならないよ。

青山かぐやさんの何が不満なんだ。だいたい……」


そのときお父様の携帯が鳴り、「少し待て」と言うと彼は部屋を出て言った。


青山かぐやさんって、さっきのかぐや姫……!?あの人が相手なんだ。


「澪音、あの人ならいいじゃないですか。『こいつだけは勘弁』ってどういうこと!?」

耳打ちするように澪音に質問する。
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