君に捧げるワルツ ー御曹司の恋と甘い旋律ー
「どうして……許嫁が入れ替わるようなことに……」
『私の許嫁というよりは、かぐやは次期当主の許嫁なんだ。当主が変われば当然のことだ。』
自分の元婚約者のことを話しているのに、そんなふうにしか語れないなんて本当に冷たい人だ。
『青山かぐやは、青山財閥の長女。樫月家当主に必要な縁組みなんだ。
彼女が樫月の家に来るだけで澪音の仕事もスムーズになる。
だから、あなたが澪音のもとを去れば澪音は無駄に苦しまずに済むんだよ。理解しなさい』
「でも……」
澪音は私を雇ってまで婚約を嫌がっているのに。
そのときドアが開けられる音がして、振り返ると部屋から出てきた澪音が表情を崩した。
「父もなかなか厳しいな。
ま、そんなにすぐ上手くいくわけないか」
さっきの厳しい顔を見た後なので、そうやって笑顔を見せてくれると安心する。
「澪音、あの、お兄さんが……」
と言いかけて、さっきまで弥太郎さんが座っていた椅子を見ると、もう居なくなっていた。
「兄さん? そうだった。
早く柚葉に兄さんを紹介しないとな。
あの父親だけだと俺の家族の印象が悪すぎるから」
お兄さんにはもう会ったし、何ならお兄さんの方が最悪な印象だったけど!というのは心の中に留める。
「ちょうどいい、一緒に昼食にしよう。
兄さんも柚葉に会えばきっと喜ぶ」
「いやいや、私なんか絶対、喜ばないと思いますよ!」
さっきの弥太郎さんの蔑むような表情を思い出す。できればあまり関わりたくないけれど……。
「謙遜するなって。いつも思うけど、柚葉はもう少し自分に自信を持てよ。せっかくそんなに可愛いんだから。
柚葉は、いてくれるだけで癒されるんだ」
澪音は私の髪を撫でると額に唇をつけた。急だったので息が止まりそうになる。
「れ、澪音……!」
「これくらい良いだろう? 唇にしてるわけでもないし」
『私の許嫁というよりは、かぐやは次期当主の許嫁なんだ。当主が変われば当然のことだ。』
自分の元婚約者のことを話しているのに、そんなふうにしか語れないなんて本当に冷たい人だ。
『青山かぐやは、青山財閥の長女。樫月家当主に必要な縁組みなんだ。
彼女が樫月の家に来るだけで澪音の仕事もスムーズになる。
だから、あなたが澪音のもとを去れば澪音は無駄に苦しまずに済むんだよ。理解しなさい』
「でも……」
澪音は私を雇ってまで婚約を嫌がっているのに。
そのときドアが開けられる音がして、振り返ると部屋から出てきた澪音が表情を崩した。
「父もなかなか厳しいな。
ま、そんなにすぐ上手くいくわけないか」
さっきの厳しい顔を見た後なので、そうやって笑顔を見せてくれると安心する。
「澪音、あの、お兄さんが……」
と言いかけて、さっきまで弥太郎さんが座っていた椅子を見ると、もう居なくなっていた。
「兄さん? そうだった。
早く柚葉に兄さんを紹介しないとな。
あの父親だけだと俺の家族の印象が悪すぎるから」
お兄さんにはもう会ったし、何ならお兄さんの方が最悪な印象だったけど!というのは心の中に留める。
「ちょうどいい、一緒に昼食にしよう。
兄さんも柚葉に会えばきっと喜ぶ」
「いやいや、私なんか絶対、喜ばないと思いますよ!」
さっきの弥太郎さんの蔑むような表情を思い出す。できればあまり関わりたくないけれど……。
「謙遜するなって。いつも思うけど、柚葉はもう少し自分に自信を持てよ。せっかくそんなに可愛いんだから。
柚葉は、いてくれるだけで癒されるんだ」
澪音は私の髪を撫でると額に唇をつけた。急だったので息が止まりそうになる。
「れ、澪音……!」
「これくらい良いだろう? 唇にしてるわけでもないし」