君に捧げるワルツ ー御曹司の恋と甘い旋律ー
こんな風にギスギスした態度をとれば、きっと嫌われてしまうだろう。


どうして私は上手く振るまえないのかな……


澪音が私を好きじゃないことなんて初めから分かっていたし、例えかぐや姫を好きだったとしても別に責める筋合いなんか無いのに。


澪音が長い沈黙を続けるので、私の相手をするのが面倒になったんだろうと思った。理由も言わずに怒りをぶつけられたら、嫌になっても不思議ではない。


でも、澪音の行動は私の想像を裏切っていた。


「簡単には言えないような嫌なことがあったんだな」


まるで自分の心が傷むかのように、心配そうに私を見る。


「でも、まだ寝たら駄目だよ。

辛いことがあったなら尚更、寝る前に気持ちをリセットしたほうがよく眠れるんだ。

俺に言えないならそれでもいいからさ」


と、ポットとティーセットを手にして薄く笑う。


「一緒にお茶でも飲もう

ハーブティー、好きだったろ?」


澪音は慣れない手つきでティーポットにお湯を注いでいる。


……というか、かなり手元が怪しい。お茶を入れるならお湯より先に茶葉を入れて欲しいところだけど……


澪音は「熱っ」と、ポットから溢れたお湯に顔をしかめるので、慌てて冷たい水をグラスに入れて澪音の手を冷やす。


「ピアニストなんだから手を大切にしてください!

お茶なら私が淹れますから。


っていうかできないならお茶淹れようとしないでいいですからっ」


「はは、ごめん、不器用で。これじゃ柚葉の役に立てないな」


困ったように笑う澪音を見て、どうして私はこんな言い方しかできないんだろうと自分が嫌になった。


「……違います。私が悪いんです。

私の方こそ、ごめんなさい。優しくしてくれてるのに怒ったりして

澪音に優しくしてもらえると嬉しいけど、今は辛くなるから」


「……どうして?」
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