君に捧げるワルツ ー御曹司の恋と甘い旋律ー
「忙しいです!茂田さんに花嫁修行として山ほど勉強メニューを渡されて死にそうなんです」


『頭の良くない人間には勉強は辛いらしいな。お前もさぞ大変だろう』


「ああそうですよ!大変です!

って、弥太郎さんっ。たまには嫌み以外で会話できないんですか?」


口を尖らせて抗議しても、弥太郎さんは私の文句には一切耳を貸さずに、画面に文字を打つ。


『何の勉強をしている?』


「……マナーとか、英会話とか、茶道とか。

あとは樫月家について、最近のニュースについて。もう頭がパンクしそうです。

澪音はケイボウ学だけで十分と言ってましたが、それって難しいんですか?」


そう聞くと弥太郎さんは少しむせて、私を呆れた目で見たあげく、


『これだから学のない女と話すのは嫌なんだ』


と言った。何もそこまで言わなくてもとムッとしていると、ケイボウ学の検索結果を見せられた。


「な……!!

これは、夜の秘技的な! 妖しいテクニック的なやつですか……

澪音のばか……!


こんな単語知ってるのは学があるとか無いとかじゃないと思うんですけどっ!」


『知らなくても前後の文脈で何となく想像つくだろ、人並みの教養があれば。

これで分かったろ?澪音がその他の知識を求めて無いってことは、所詮お前は身体だけの関係ということだ』


そう言われても、身体だけの関係以前に本当は恋人代行の契約関係でしかない。


『それにしては色気もない女だな。

弟ながら、性的志向がわからん奴だ』


「性的志向とか言わないでくださいっ。普通もうちょっとオブラートに包むでしょ」


『すまない、舞姫に婉曲的な表現が通じるのか自信が無かったから』


ああもう、この人は……!!
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