君に捧げるワルツ ー御曹司の恋と甘い旋律ー
髪を巻いたところで、バイト中は後ろでまとめているので見た目にたいした変化はない。


でも、目ざとい人は気がついてくれるようで、この前ダンスを教えてほしいと言ってくれた杉崎さんが「可愛い」と褒めてくれた。


「柚葉さん、ひさしぶり。

そんなに綺麗にして、このあとデートの予定でもあるんですか?」


「照れますね、ありがとうございます。

そうだったら良かったんですけど、残念ながら深夜まで働きっぱなしなんですよ」


料理とビールを置いて席を離れようとすると、「ちょっと待って」と引き留められる。


「ダンス、いつなら教えてくれますか?

できれば、今日のうちに日程だけでも決めていいですか?

最近はここに来ても、柚葉さんにあまり会えないから」


杉崎さんの真剣な様子に押されるように、空いている日にダンスレッスンの予定を入れた。それに合わせて、プライベート利用できるスタジオを予約しておく。


「その後はお食事にお誘いしてもいいですか?

お礼の意味もこめて、旨いものをご馳走しますよ。

といっても、クロスカフェ以上の料理ではないですが」


「ふふ、ウチのオーナーの料理は日本一ですからね。

お気遣い、ありがとうございます。有り難くご馳走になります」


たまにはお屋敷を出て、外でご飯を食べるのも良い気分転換になりそうだ。

特に今は……澪音と一緒だと何を話しながら食事したらいいのかわからないし。
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