君に捧げるワルツ ー御曹司の恋と甘い旋律ー
『それは違う。

それに、こんな話をしたのは、舞姫の慰めの言葉が欲しかったからではない』


「ああそうですか!

別に私も慰める気はありませんけどね!!」


余計な心配をした私が馬鹿だった。そっぽを向くように画面を見ると、演奏はちょうど第二楽章が始まったところだった。優しくて甘美なメロディーが心地良い。


弥太郎さんが、目の前に分厚い本のようなものを差し出したので手に取る。


「これ、何ですか……?」


中を開くと、小さな子供のアルバムだった。緩くウェーブした髪の可愛らしい男の子が、活発そうな少年の影に隠れるように写っている。


「これ、澪音と弥太郎さん!?

ちっちゃな頃の澪音って、まさに天使ですね!!」


弥太郎さんが頬を緩めて頷いた。見た感じ、弥太郎さんと澪音の歳はわりと離れているようだ。


澪音が花冠を女の子にあげている写真もあった。女の子はとても利発そうな顔立ちをしている。


「これは、かぐや姫?」

「ひめ?」

「あ、すみません。私の勝手な渾名です。かぐやさん?」

『澪音が6歳、かぐやと俺が11歳の頃だ』


こんなに幼い頃からかぐや姫と一緒だったんだ。写真を見て、胸がまたズキンと痛んだ。


それにこの写真の数々……澪音はべったりとかぐや姫にくっついたり、くまの縫いぐるみを渡したり。


「こんなにちっちゃな頃から、澪音はかぐや姫のこと好きだったんですね」
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