千秋先輩。その鈍感、本気ですか?
消化しきれない気持ちで乾いたドアを開ける。

「綾乃ちゃん、何もされなかった?」


「やっぱり千秋先輩のこと好きみたいで」


「でも綾乃ちゃんは綾乃ちゃんなんだから気にしなくていいよ!今ね、ちょうど王子様の登場シーンだよ!」


「ありがとう!えっ!すぐ準備する!」


まだ塗装のされてない剣と即席のマントを羽織る。

「『つまり、この塔にはかの美しいと有名な眠り姫がいらっしゃるというのか。』」


「『はい、しかしまだどの王子もこの塔には足を踏み入れたことがございません』」


「『何?すると私は1番最初にこの塔に入る王子ということだな。任せろ。私が姫を必ず眠りの呪いから救い出してみせよう!』」


「綾乃ちゃんの演技ますます磨きがかかってきたねぇ」
愛海ちゃんが私のマントを整えてくれる。


「でも無理しないでね。私も委員なんだしなんでも協力するから!」


「愛海ちゃん…!」


「それは置いといて!さっき千秋先輩も綾乃ちゃん探しに来てたんだけど会った?」


「えぇ⁉︎会ってない!」


「委員のこととは違う感じだったんだけど、『いないなら今度で大丈夫だ!』ってすぐ戻っちゃって」


「千秋先輩、どうだった?」


「ごめん、すごく普通の態度だった」


「そっか〜〜」
切り替えてくれて嬉しいけど、やっぱりちょっと、ちょっとだけ残念!!!
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