リボンと王子様
千歳さんの瞳に見えた哀しさが辛かった。

気のせいじゃなかった。


千歳さんは何度も私に『話したいことはないか』と尋ねていた。

それは、隠さずに自ら話してほしいというサインだったのに。



嫌われて幻滅されることが恐くて。

この場所を失いたくなくて。

有子おばさまと公恵叔母さんに何と言えばいいかわからないとか自分を守る言い訳ばかりで取り繕って。


嘘で固めて。


……最悪の結末を招いてしまった。



「……だけど穂花がお手伝いさんをしている理由はわからなかった。
須崎株式会社で秘書の仕事をしていたことは少し調べればわかった。

今は休職扱いになっていることも。
……うまく伏せられてはいたけれどね。
それで須崎社長も知ってる話なのかと思った。

おかしいとは思ったよ。
いくら俺と勤務形態や勤務時間が違うとはいえ、穂花からは出勤している様子が感じられなかったから。
でも何故そこまでするのかがわからなかった」


そこまで言って千歳さんは瞳を伏せて俯いた。

長い睫毛が頬に陰を落とす。

千歳さんの表情は見えない。

私は人形になってしまったように身体を動かすことができず、呆然と千歳さんを見つめた。
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