宮花物語
青蘭を見て、一目で気に入ってしまった信志の顔が、炎の中に浮かんだ。

「ここに来た時も、死に損ないだと思っていた。生きているのか、死んでいるのか、分からないまま時が過ぎて……王から、妃に迎えたいと言われた時も、何の感情もなかった。王を慕う気持ちはなかったけれど、命を救ってくれたご恩は、返さないといけないなんて、初めは受け入れたけれど。」

そう語る青蘭を見て、黄杏は悔しくなってきた。

信志は、そうだと知っていても、青蘭を想っていたのだ。

叶わなくても、気持ちが通じなくても、この方の元へ通っていたのだ。

「黄杏さん。他の妃の元へ王が行って、寂しくないのかと、お聞きになったわね。」

「はい。」

「答えはいいえよ。もう、寂しいと思う気持ちも、失せてしまった。だから、王が私の元へ来たとしても、それは形式のようなものだから、気にしないで頂戴。」


“はい”とは言えなかった。

信志の気持ちを考えれば、形式だなんて。
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