宮花物語
「失礼しました。」

女人が頭を下げると、白蓮は口許に手を当て、クスクス笑う。

「それに紅梅さんは、王に何かをねだるような方ではない。王の気まぐれでしょう。」

「奥様……」

王が夜、白蓮の元へ通って来ない分、夕食の時間を如何に白蓮が大切にしているか、女人は痛い程知っていた。

「やはり、夕食を共にするのは、正后の役目だと、王にたしなめられては?」

「ふふふ……そのような役目も、決まり事もないのよ。」

白蓮は、信志がいつも夕食の時に座る、椅子を見つめた。

「ただあの方は、小さい頃から私と夕食を共にしていらっしゃるから、他の方と夕食を摂ると、しっくりこないだけなのです。」

「はあ。そうなのですか?」

「ええ。」

白蓮は椅子の向こうにある、窓を目を細めて見た。


丁度、紅梅の屋敷の屋根が見える。

こんなに近くにいながら、何もできない。

白蓮は、やるせない気持ちを抱えていた。
< 157 / 438 >

この作品をシェア

pagetop