宮花物語
「すまない、紅梅。」

「いいえ。今は、黄杏さんの方が、大事です。」

王は紅梅を抱き寄せ、背中をポンポンと叩くと、屋敷を出ていった。


残された紅梅は、一人寝所に座り、呆然としている。

何も今後一切、王が訪ねて来ない訳ではない。

黄杏も、これを乗り切れば、元気に子が産める。

だけど、どうしてだろう。

今、自分がこうして、一人で寝所にいる事が、悲しくて悲しくて、仕方がない。

「うっっっ……」

涙が止まらない。

ようやく、王を自分だけのモノに、できると思っていたのに。

紅梅はその夜、涙に明け暮れた。


一方の黄杏は、お腹の激痛に耐えていた。

「うううううう!」

お腹の中の赤ん坊は、大丈夫なのだろうか。

黄杏は、それだけが心配だった。

「黄杏!黄杏!!」

信志が駆け付けた時、黄杏は全身に、大量の汗をかいていた。

「黄杏!」

急いで、黄杏の手を取る。

「信志様……」
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