宮花物語
少し大人になると、村長に納屋へ来るように呼ばれ、そこで無理矢理、男を教えられた。

以来、村長の家で働いていた男達の、夜の相手をさせられるようになった。

疲れていても朝起きて、働かねばならない。

腹が減っても、食べさせて貰える物もない。

夜倒れても、男達の慰み物にならなければならない。

地獄だった。

だが黒音には、その地獄から這い上がろうとする力があった。


村長の家で働いていた男の中には、女中達に手を出さない者もいた。

その中の一人を丸め込み、恋仲に仕立てあげ、屋敷を出る事に成功した。

その後、宮殿の中に出入りする老人に、うまく家族だと思わせ、宮殿の掃除人に。

村長の家で教え込まれた腕を見込まれ、黒音はあっと言う間に、妃付きの女人へと変貌を遂げた。

だが、そんな男達の慰み者になっていた女が、いとも簡単に、宮殿で妃付きの女人になれるのか。

黒音は村を出る時に、ある仕掛けをしていたのだ。
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