宮花物語
それは、恋仲になっていた男に、やはり村長の娘を騙すように仕向け、自分と同じ日に村長の娘を、その男と駆け落ちさせていたのだ。

男も、夜な夜な欲求の捌け口にされていた黒音より、男を知らない初な村長の娘がよくなったのか、二人は喜んで森の中へと消えて行った。

そして黒音はまんまと、身を眩ました村長の娘だと偽って、女人の地位を手に入れたのだ。


「ふふふ……これで終わったりしないわよ。」

黒音は胸を踊らせながら、唇に紅をさした。

今日から三日三晩、新しい妃の元へと王は通って来るのだ。


気の重い信志は、暗い顔で黒音の元を訪れた。

「お待ち申し上げておりました。」

「ああ……」

青蘭の時も、紅梅の時も、もちろん黄杏の時も、この三夜通いは、心が踊って仕方なかった。

だがこれも、新しい妃を迎えたら、通らなければならない儀式の一つだ。

しかも黒音は黄杏付きの女人だけあって、酒の注ぎ方や食事の進め方、どれも完璧だった。
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