宮花物語
「まあいい。他の妃は皆、男を知らなかったからな。初夜の時には、手がこまねる程焦らされた。そなたが男を知っているのであれば、思ったよりも早く終わる。さあ、私を悦ばせてくれ。」

黒音の胸は、深く傷ついた。

これでは、村長の家で働いていた男達と一緒ではないか。

最初は丁寧に愛撫していた男達も、日が経つにつれて、自分の快楽しか考えなくなる。

そんな悔しい思いをする男女の交わりは、卑しい相手だけであって、王ほどの高貴なお人ならば、少なくても甘美な夜を味わえると思っていたのに。

黒音は、王の前に膝を着いた。

「……あまりにも、酷い仕打ちでございます。」

「黒音?」

「これから夫婦になり、共に人生を歩む夫となる人が、なさる行いとは思えません。」

信志は服を直した。

「……いくら私に心が向いてないと分かっていても、こればかりは、耐えられません。」

黒音の目から、ボロボロと涙が流れた。
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